
- ハコスカについて、これはいつ頃の車なんですか?
- 今井氏
- 「昭和44年から47年くらいまで、生産されていた期間は短い車ですね。当時は4年周期で変わっていたんですよ」
- 世代的にお求めになられる層はどのくらい?
- 今井氏
- 「やはり大人の方ですね。若くて40代から、それ以上って感じですね。だいたいが“昔乗っていた”とか“当時から憧れていた”という方。あとはそうですね、今の車に魅力を感じなくなってしまったというのも…」
- 今の車に魅力を感じない?
- 今井氏
- 「今の車って“走る感動”がないですよね、もうキーを入れてエンジンをかけたら当たり前のように走る。そこに車という価値観を求められないとおっしゃる方が多いですね、私も同意見です」
- なるほど。とはいえ、旧車は乗る人を選ぶというイメージがあるのですが。
- 今井氏
- 「もちろんです。乗りこなすにはそれなりに知識と技術が必要です。たとえば、エンジンひとつかけるにしても、今はインジェクションが…つまりコンピューターがなんでもやってくれる。でも、この当時の車はキャブレターなんで、ガソリンがキャブレターに流れ込まないといくらエンジンを回してもかからない」
- そもそもエンジンをかけるというスタートからそういった操作の塩梅が必要になってくると。
- 今井氏
- 「その通りです。もちろん、お買い上げになられる際にそういったことはすべてしっかりとアドバイスします。メンテナンスについても、責任を持ってしっかりとたしますので安心していただいていますよ」
- つまり、心配無用ってことですね!
- 今井氏
- 「その通りです!全面的にバックアップします」

- そもそも、元の車体って走る状態で残っているんですか?
- 今井氏
- 「基本、走らない状態と考えたほうがいいですね。もう走らないもんだと思ってます(苦笑)」
- いわゆる不動車を走るようにして、しかも考えうる最高の状態にまで復活させると
- 今井氏
- 「その通りですね、それが私の仕事です」
- これまで、「さすがにこれは無理かも…」といったような、苦労されたエピソードはありますか?
- 今井氏
- 「痛い思いはもう何度もしましたけど(笑)一番辛かったのはボディが抜けちゃってたケースですね」
- ボディが抜ける? つまり、底がないといった状態ですか?
- 今井氏
- 「そうですね、足元というか下が抜けちゃってる状態。ボディの洗浄から作業を始めるんですけど、傷んでどうしようもない部分を取り除いていったら、底がなくなっちゃって」
- それって直せたんですか?
- 今井氏
- 「直せるんですよ、というかイチから作る作業ですよね。板金で1枚も板からコツコツと。ハコスカは特殊なラインや形状になってるんで、車によって使い回しが出来ないので、ひとつずつ作らなきゃいけないんですよ」
- 板金で造形しちゃうんですか…コスト度外視ですね。
- 今井氏
- 「そうですね…、好きじゃないとというか、愛がないとやってられないですよ(笑)」

- 今からハコスカに乗ってみようと思っている方にアドバイスをお願いします。
- 今井氏
- 「うちのお客さんには必ず言っているんですが、うち以外のお店も見たほうがいいですよと。とにかくたくさんの車を見て、納得いった車体を選んでくださいって」
- その上で、レッドメガフォンのハコスカを選んでくれたらいいと?
- 今井氏
- 「そうですね。正直言って、商売なんで、いろんなお店もあると思うんですよ。サクっと仕上げてパッと売るみたいなところもあれば、愛情を持って製作されているところもある。そういうのを自分の目で確かめてほしいですね」
- いろんなお店で車体を見るとしても、どの部分を見ればいいですか?
- 今井氏
- 「ボディですね。結局は鉄の部分なんですよ。パーツは交換が効きますが、ボディはそうはいかない。うーん、こんなこと言っちゃうと怒られちゃうかもですけど、僕だったら軽くボディを叩きますね」
- スイカみたいですね(笑)
- 今井氏
- 「そう、スイカと同じなんです。コツコツとボディを叩くと、鉄の部分とそうでない部分が明らかに音でわかるんですよ。穴が開いたり欠けちゃったりした部分をファイバーなどの素材でごまかしちゃってるんですよ。これは珍しくない話なんですけど、うちではしっかりと鉄でね、板金でちゃんと処理しています」

- 現在、ハコスカは手に入りにくい状況なんですか?
- 今井氏
- 「そもそも台数が少ない車ですし、当時の高級車ですからね。たしか販売価格が150万くらいだったはずなので、いまだとそんな価格帯になるのかな、かなり高い車ですよ」
- 当時の大卒初任給が1万5000円くらいなので、現在の価格にすると約1,900万円!
- 今井氏
- 「なので、これも需要と共有のバランスですけど、台数が少ないとどうしても価格も上がってしまうわけなんです。あと、今は海外の方もハコスカに限らず、日本の旧車をお求めになられますからね」
- 海外の方はどういったモチベーションでお求めに?
- 今井氏
- 「財産というか、投資目的でお求めになられる方が多いですね。うちからも何台か扱っていますね。日本の、特に古い車は価値があるので富裕層の方がお買い求めされるケースが増えている状況ですね」